2013年1月28日法制審議会少年法部会の決定に対する声明
有志の会は、法制審議会少年法部会の2013年1月28日採決に対し、29日、以下の声明を発表しました。
2013年1月28日、法制審議会少年法部会は、少年法改正に関する諮問第95号に対し、①少年審判に国選付添人が選任される対象事件の範囲を長期3年を超える罪にまで拡大すること、②非行事実の認定に必要な場合は、検察官が立ち会うことができる対象事件も同様の範囲に拡大すること、③有期を引き上げること(不定期刑の上限を現行の10年から15年に、無期刑で処断すべき場合の代替有期刑の上限を現行の15年から20年に引き上げ) を内容とする要綱(骨子)のとおり法整備するのが相当である旨法制審議会(総会)に報告することを決定した。
しかし、②検察官関与対象事件の拡大は、少年審判の刑事裁判化をさらに進めることになり、少年法の理念を崩壊させる危険性をはらんでいる。特に、大人の刑事裁判と異なり、裁判官が全ての捜査資料に目を通し、一定の心証を形成したうえで審判を開く、現在の少年審判の構造のもとでは、冤罪を生む危険が高まることは明らかである。
今回の法制審議会少年法部会において、これらの問題についての議論が十分になされたとはいえない。国選付添人制度と検察官関与は別個独立の制度であるにもかかわらず、国選付添人の対象範囲だけを拡大するのは「ワンサイド」の事態になるなどという、成人の刑事手続きと少年審判手続きの相違点を無視したバランス論ばかりが重視され、子どもの視点からの議論は殆どなかった。
また、③少年刑の厳罰化の議論において、少年の凶悪犯罪が減少している中で刑を引き上げる必要があるのか、その立法事実が十分に検討されていない。被害者の処罰感情や応報論ばかりが重視され、刑の引き上げが少年の更生や非行予防に効果があるかについての科学的検証は全くなされていない。
おとなの10年と子どもの10年は、全く意味が異なる。16歳の子どもが、20年服役することとなれば、社会で暮らした時間より、刑務所で幕らした時間の方が長くなってしまう。心身の成長が最も著しい時期に長期間社会から隔絶された子どもが、社会に戻ってきたときの社会適応の困難は容易に想像できる。社会に居場所を失い、ひとりの社会人として、自立することが不可能となれば、再び犯罪者となるしかなくなる恐れが大きい。厳罰化は、却って少年の更生の妨げになる可能性が高いのである。少年犯罪被害者の権利回復は、厳罰化によってではなく、被害者の国選弁護人制度の実現などを含めた総合的な制度構築により行われるべきである。
私たちは、②検察官関与制度の拡大、③少年刑の厳罰化を内容とする少年法「改正」に断固反対する。
以上