2013年1月28日法制審議会少年法部会採決に際する日弁連執行部に対する抗議声明
有志の会は、2013年1月28日法制審議会少年法部会採決に際する日弁連執行部の行動について、31日、以下の声明を出しました。
2013年1月28日、法制審議会少年法部会は少年法改正要綱骨子に関し、①国選付添人制度の拡充、②検察官関与の対象事件拡大、③不定期刑の上限引き上げを含み、諮問どおりの取りまとめをした。この②③は少年審判の刑事裁判化、厳罰化を進めるものであって、到底容認できないものであるが、日弁連推薦委員(2名)は日弁連執行部の指示の元に、採決に当たって②に賛成する行動を採った。執行部は、①と②の一括提案に賛成したのであって、②に賛成したのではないと弁解するが、それはごまかしの理屈に過ぎず、国民と弁護士会員に対する重大な背信的行為である。
そもそも審判への検察官関与は、審判廷での少年の発言を保障して自発的な更生を期待する少年法の理念を損ない、刑事処罰化をもたらすものであるとの理由で、法制定以来禁止されてきた。2000年「改正」によっても、僅かなケースで検察官関与が可能になったに過ぎず、その中にもえん罪事件が発生し、その弊害は少年司法関係者の認めるところであった。累次の日弁連意見もその弊害の存在を当然視してきた。
しかるに日弁連執行部は財政上の理由から、これまでの日弁連意見を躊躇することもなく、覆してしまった。採決終了後に発せられた28日付け会長談話では、検察官関与の本質的な欠陥として「少年が成人よりも不利益な地位に置かれ、真実の発見が困難になるおそれがある」とえん罪の危険があることを指摘しながら、それを単に運用により払拭される「懸念」に過ぎないと弁解し、関与拡大に反対とは言わず、裁判官には関与決定における謙抑性を、検察官には少年への配慮を求めているに過ぎない。個人の人権にかかわる権力自らの謙抑にしか期待できない法制度の合理性など、国民に納得されるはずもない。端的に「検察官関与反対」と言わず妥協する日弁連は、人権擁護をめざす法律家団体としての期待を裏切り、国民の不信は募るばかりであろう。
さらに重大なことは、執行部は付添人制度拡充と検察官関与拡大との一括採決を容認し、個別採決を求めなかったことである。もともと法務省の意図は、一括採決を強行することによって、弁護士の検察官関与拡大反対の意見を封じようとすることにあった。そうであればこそ執行部の照会に対して、圧倒的な数の単位会と会員が、まず個別採決を要求するよう強く求めていた。これは付添人制度拡充と検察官関与拡大阻止とを、ふたつながら両立、実現させたいという切実な要求の反映であった。照会回答に向けての各地の議論状況を通じて、これらの切実な思いを知りながら、執行部は傲慢にも会内の個別採択要求を無視し打ち捨てたのである。このような執行部に、これ以上少年の未来を託すことはできない。
次に③の厳罰化については、感覚的、感情的な世論を背景にした非合理な「改正」であるにも関わらず、日弁連推薦の2名のうち1名が賛成した。上記会長談話にも言及がない。日弁連の世論形成責任の自覚を欠くものというしかない。
我々は、少年法の理念を踏みにじり、人権擁護の砦たるべき使命を放棄した日弁連執行部に対し、断固抗議するものである。
以上