子どもとどうかかわるか? (これまでの学習会)
Part1「被害と加害に向き合いながら」2013/02/23
山口由美子さん (佐賀バスジャック事件被害者)
(パネルディスカッション)山口由美さん/佐々木光明さん(研究者)/坪井節子さん(弁護士)
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Part2「子どもたちの声なき声を聴く」2013/04/18
寺尾絢彦さん(元家庭裁判所調査官/ミーティングスペース・てらお主宰)
参加者によるディスカッション:「少年法を生み出した理念って?」
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Part3「非行と向き合うための対話」2013/07/20
(お話:いじめと修復的対話)山下英三郎さん(元スクールソーシャルワーカー/日本社会事業大学名誉教授)
(コメント:少年法『改正』問題にひきつけて考える)佐々木光明さん(神戸学院大学教授)
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院内集会ちょっと待って!少年法「改正」少年の心に寄り添う審判とは? 2013/11/06
~少年法の歴史を振り返りながら、あるべき審判の姿を探る~
多田元弁護士(愛知県弁護士会)/村井敏邦さん(研究者)/坪井節子弁護士(東京弁護士会)
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「改正」少年法~国会審議と付帯決議について

 2014年4月11日、検察官関与制度拡大と厳罰化を内容とする「改正」少年法
とうとう成立してしまいました。
 私たちは、今回の少年法「改正」案が法制審議会に諮問された2012年9月以来、
検察官関与対象事件拡大は、少年審判の刑事裁判化をさらに進め、少年法の理念を変容させるものであること、有期刑の長期化は子どもの更生を著しく困難にし、非行予防の効果もないことを繰り返し訴え、強く反対してきました。
 2014年2月7日に「改正」法案が上程されてからは、自由法曹団青年法律家協会と連携してロビー活動を行い、同月18日には、被害者と司法を考える会、子どもと法21、青年法律家協会と共催で、反対の声を結集する院内集会を開催しました。
 衆議院法務委員会では、私たち有志の会の呼び掛け人である坪井節子弁護士と村井敏邦弁護士(大阪学院大学教授)が参考人として出席し、非行を子どもの育ちの問題として捉え、子どもの健全な成長発達をはかることを通じて、非行という問題を解決することを目指す少年法の理念の重要性、そこに検察官は必要ないこと、検察官の関与が事実認定の適正化に資することはなく、むしろ、冤罪の危険が高まること、また、長期処遇を受けた子ども達の社会復帰がいかに困難で、更生の妨げになっているかを指摘し、検察官関与拡大と厳罰化について強い反対意見を表明しました。
 しかしながら、衆議院では、法務委員会でたった一日の質疑(参考人質疑を含め6時間40分)がなされたのみで、4月1日衆議院本会議で可決、参議院法務委員会でも二日間の質疑(参考人質疑を含め7時間20分)のみで、4月11日の参議院本会議で可決成立してしまったことは、非常に残念です。

 それでも、短い審議日程の中、検察官関与は本当に事実認定の適正化につながるのか、少年法の刑事裁判化をもたらし、少年法の理念を破壊してしまうのではないか、子どもが委縮して真実を話せなくなり、却って適正な事実認定を妨げることになるのではないかという問題意識からの質疑がなされ、衆参両議院法務委員会の付帯決議につながりました。
 特に、参議院法務委員会の以下の付帯決議は注目すべきものと考えています。


  2項 検察官関与制度の趣旨が事実認定手続の適正化にあることに鑑み、
        改正後の同制度が少年法の理念にのっとって適正に運用されるよう、
     十分配意すること。また、少年審判に関与させる検察官について、
        少年の心理及び審判の特質に関する理解を深めさせること。


 検察官関与の必要性判断を限定的なものとし、検察官が関与する場合にも、少年法の理念に反する事態が生じないように歯止めをかける趣旨が明確にされたものとして、注目すべき付帯決議といえます(衆議院法務委員会の付帯決議1項、3項、8項も同趣旨のものといえます)。
  
 少年刑の上限引き上げについては、厳罰化ではない、少年についても罪に見合った科刑ができるように科刑の適正化を図る趣旨だというのが政府の説明でした。
 しかし、実際に上限が引き上げられれば、全体に厳罰化する傾向となるのは、2000年改正以後の運用、成人の刑の引き上げ後の状況をみても明らかではないか、少年犯罪は凶悪事件も含め、20年前の半数以下に減少しているのに、何故、今、厳罰化なのかと、立法事実を問題にする質問、子どもに対する長期処遇は社会復帰を困難にし、再非行につながるおそれも高まるのではないかという懸念からの質問も相次ぎ、以下のような付帯決議がなされました。


 参議院法務委員会の付帯決議
 3項 少年に対する刑事処分に関する規定の見直しの目的は、言い渡す刑を一律に
     引き上げることではなく、少年法の理念の下でより適切な科刑を可能にする
        ことであることについて、周知徹底を図ること。
 4項 少年院における矯正教育及び少年刑務所における矯正処遇と社会復帰後の更
        生保護及び児童福祉とが連続性を持って行われ、仮退院及び仮釈放の運用が
        一層適正に行われるよう、少年に対する支援の充実について検討を行うこと。
   (衆議院法務委員会でも、上記4項とほぼ同じ内容の付帯決議がなされています)

 3項は、量刑判断においても、少年法の理念を考慮すべきとし、厳罰化に歯止めをかけるものといえますし、4項は、少年の社会復帰、更生のための連続性のある支援の充実につながるものとして期待します。
 
  国選付添人制度に関しても、衆参両議院法務委員会で付帯決議がなされています。
  特に、参議院法務委員会の付帯決議では、子どもの権利条約の趣旨にも言及されており、子どもの権利という視点から国選付添人が対象事件全件に選任される運用を目指すものとして評価できます。

 参議院法務委員会の付帯決議
 1項 少年審判において付添人が果たす役割の重要性及び児童の権利に関する条約
        の趣旨に鑑み家庭裁判所の裁量による国選付添人制度の対象事件の範囲の
        拡大に適切に対応するため、刑事裁判と異なる少年審判の特質を理解した弁
        護士が国選付添人に選任されるよう同制度の趣旨について司法関係者に周知
        徹底を図り、適正な運用が行われるよう留意すること。また、同制度の対象
        事件の範囲については、少年鑑別所送致の観護措置がとられたぐ犯少年への
        適用を含め、引き続き検討を行うこと。

 私たちは、上記付帯決議の趣旨を徹底した運用がなされるよう今後の運用を監視していくとともに、子どもの権利条約など国際基準にのっとった少年司法の実現を目指し、引き続き運動を続けていきます。

 

今回の少年法「改正」法案は何が問題なのか

 今回の少年法「改正」法案は、①国選付添人制度拡大、②検察官関与拡大、③厳罰化を内容とするものですが、閣議決定を受けた報道をみると、①と②について、「国選付添人の弁護士と検察官が少年審判に立ち会える範囲を拡大することで、少年の権利保護にも配慮したもの」などと説明するものが多いようです。

  しかし、現在、全国の弁護士会が実施している当番付添人制度によって、身柄拘束された少年については、少年が希望すれば無償で弁護士付添人を選任できる体制が、既に整えられています。

 少年からみれば、国選付添人も当番付添人も、無償で弁護士付添人が付いてくれる制度という点で違いはありません。①国選付添人制度の拡大は、弁護士会が実施している当番付添人制度のごく一部を国の制度とするものにすぎないのです(大人の国選弁護人制度と異なり、裁判所が必要と認めた場合にしか国選付添人が選任されない点でもまだまだ不十分な制度です)。

 ①国選付添人の拡大によって、特に少年の権利保護を図ることができるようになるというわけではないのです。

 私たちは、今回の少年法「改正」法案は、少年の権利保護を図るどころか、②検察官関与の拡大と③厳罰化を伴う点で、明らかに少年に大きな不利益をもたらす制度改悪だと考えています。

 ②検察官関与制度と③厳罰化は何が問題なのか、改めて整理してみました。

問題1 少年法の理念に反する検察官関与の拡大
 少年法は、非行を少年の育ちの問題として捉え、糾弾や刑罰によるのではなく、子どもの健全な成長発達をはかることを通して、非行という問題を解決することを目指しています。
 しかし、検察官は、犯罪の訴追と処罰を使命とする存在であり、捜査段階で取り調べを担当した検察官が審判廷にいれば、子どもが自由に自分の思いを語ることは困難になり、少年法の理念を守ることができません。そのため、少年法は、刑事裁判のような対審構造(検察官を登場させて子どもと対決させる)を採用せず、審問構造(検察官は登場させず、子どもと裁判官の対話を軸としている)を採用しているのです。
 ところが、2000年改正において、家庭裁判所の非行事実認定に協力するものとして、少年審判に検察官が関与できる制度が一定の重大事件に限定して導入されてしまいました。
 今回の「改正」法案が通ると、更に、窃盗、傷害、詐欺、恐喝、強制わいせつ事件など、少年の身柄拘束事件の約80%を占める事件において、検察官が関与できることになります。いじめに関連した窃盗や傷害などの事件も、検察官関与の対象となるのです。

問題2 検察官関与による冤罪の危険性
 少年審判は、処罰の場ではないため、予断排除の原則も伝聞法則もなく、証拠制限の手続はありません。裁判官は審判が始まる前に全ての証拠に接し、一定の心証を形成したうえで審判を開くことになるため、少年が事実関係を争う場合、成人の刑事裁判の場合に比して、はるかに不利な状況に置かれることになります。
 かかる少年審判に検察官が関与すれば、少年が真実を主張することが困難となり、冤罪の危険性を増加させることになります。

問題3 立法事実なき厳罰化
 少年の凶悪犯罪は顕著な減少傾向にあり、少年の重大事件について厳罰化をはかるべき立法事実(立法を基礎づける事実)は存在しません。

問題4 子どもの人生より長い刑期
 少年の有期刑は、少年の可塑性、人格の未熟さ、情操保護の必要性等への配慮から、少年法の独自の理念に基づき規定されています。
 しかし、子ども(つまり20歳未満)たちに課せられる刑の上限が20年ということになれば、子どもたちは、自分たちが生きてきた時間よりも長い時間を、教育の保障も不十分な刑務所で過ごすことになります。そのような子どもたちが、社会に出たとしても、社会の中で自立して、やり直すことは極めて困難です。かえって再犯の可能性を高めることにもなりかねません。

 

2014年2月18日緊急院内集会のご案内

 ちょっと待って!少年法「改正」PART2

2014年2月7日、安部内閣は、検察官関与拡大及び厳罰化を内容とする少年法「改正」法案を閣議決定しました。

私たちは、この法案が少年法の理念を根本から覆すことになってしまうと、繰り返し危険性を訴えてきましたが、特に問題のない法案としてスピード審議されそうである、3月の成立、4月からの施行が予定されているとの情報もあり、事態は極めて深刻です。

私たちは、いま一度、この法案の危険性を訴え、法案をこのまま成立させてはならないことを御理解いただくべく、緊急に院内集会を開催します。
是非ご参加いただき、子どもの権利保障のためにお力をお貸しください!!

日時:2014年2月18日午前11時半~午後1時

場所:参議院議員会館102会議室(地下鉄永田町駅から3分、国会議事堂駅から7分)

内容:検察官関与・厳罰化のたどる道

   ~この法案が成立した子どもたちはどうなるか?~

   ◎法案解説

   ◎片山徒有さんのお話(詳細)(被害者と司法を考える会代表)

   ◎参加議院からのご発言

   ◎各団体からのアピール

主催:少年法「改正」に反対する弁護士・研究者有志の会

共催:被害者と司法を考える会

   子どもと法・21

   青年法律家協会

 案内チラシ PDF 

※午前11時ころから参議院議員会館の入口ゲートのところで、通行証を配布します。

 通行証を受け取って会場に向かってください。

 会場には11時15分より入室可能です。

 

 

 

 

少年法「改正」法案に反対する緊急声明

安倍内閣が2014年2月上旬にも少年法「改正」法案を上程予定であるとの情報を受けて、私たちは、2012年9月13日付緊急意見書をベースに、改めて同法案に反対する緊急声明を出しました。

 

少年法「改正」に反対する弁護士有志の会 呼び掛け人(五十音順)
石井小夜子(東京) 内田信也(札幌) 小笠原基也(岩手) 大峰 仁(福島)
狩野節子(秋田)  草場裕之(仙台)  児玉勇二(東京) 平 哲也(新潟) 
多田 元(愛知)  田中 暁(山形)  津田玄児(東京) 坪井節子(東京) 
外塚 功(山形)   中川 明(二弁)  新倉 修(東京)  野口善國(兵庫) 
平湯眞人(東京)  村井敏邦(東京)  村松敦子(仙台) 守屋克彦(仙台)
安田壽朗(鳥取)  山田由紀子(千葉) 八尋光秀(福岡) 横江 崇(沖縄)
横山慶一(青森)

少年法「改正」に反対する研究者有志 呼び掛け人(五十音順)
岡田行雄(熊本大) 川崎英明(関西学院大) 喜多明人(早稲田大)
葛野尋之(一橋大) 齊藤豊治(大阪商業大)   佐々木光明(神戸学院大)
澤登俊雄(國學院大學名誉教授) 武内謙治(九州大) 崔 鍾植(大阪商業大)
新倉  修(青山学院大) 福田雅章(一橋大名誉教授)  本庄  武(一橋大)
前野育三(関西学院大名誉教授) 正木祐史(静岡大) 村井敏邦(大阪学院大)
望月 彰(愛知県立大) 吉田恒雄(駿河台大学)  

 

      少年法「改正」法案に反対する緊急声明

 

                                 2014年2月5日

 安倍内閣は、2014年2月、少年審判に国選付添人が選任される対象事件の範囲を長期3年を超える罪にまで拡大すること、非行事実の認定に必要な場合は、検察官が立ち会うことができる対象事件も同様の範囲に拡大すること、有期刑の引き上げ(不定期刑の上限を現行の10年から15年に、無期刑で処断すべき場合の代替有期刑の上限を現行の15年から20年に引き上げ)を内容とする少年法「改正」法案を上程予定である。
 検察官関与対象事件拡大は、少年審判の刑事裁判化をさらに進め、少年法の理念を変容させるものである。また有期刑の長期化は子どもの更生を著しく困難にし、非行予防の効果もない。私たちは、検察官関与拡大と重罰化を内容とする少年法「改正」法案に、強く反対する。以下にその理由を述べる。

 

1 少年法は、非行に陥った子どもを非難し罰によって懲らしめるのではなく、非行を子どもの育ちの問題として捉え、子どもの健全な成長発達をはかることを通じて、非行という問題を解決することを目指している。
 そのために、少年審判は、教育学、臨床心理学、児童精神医学、ソーシャルワーク に関する知見などの科学的、合理的な知見に基づき、子どもを理解し、非行の原因を考え、少年の非行性を解消するために必要な処遇を決定する場とされている。
 そのような場であるからこそ、少年審判では、刑事裁判とは異なり、少年と裁判官の対話を通して適切な処分が決定される審問構造となっている。
 しかし、子どもたちは、元来成人に比して防御の能力も弱く、自らの気持ちや主張を整理し表明する力も不足している。家庭や学校、職場との関係調整を行うこともできない。このような子どもたちが、心を開き、自らの行為をふりかえり、真実を見つめ、反省し、立ち直るきっかけを得るためには、弁護士である付添人による法的援助を受ける必要性がある。これまでの扶助的付添人活動の実績はそれを裏付けるものである。
 少年法10条は少年自身の権利として付添人選任権を認めており、国連子どもの権利条約も弁護人等の法的援助を受けることを子どもの権利として認めている。少年の付添人選任の権利行使が保護者等の貧富の差等により格差が生じることがあってはならないのは当然のことである。弁護士付添人の法的援助を平等に保障することは、すべての子どもの健全な育成に責任を負っている国の本来的な責任というべきなのであり、国選付添人制度の拡充は当然の要請である。
 そして、これらの援助は、現実に身柄の拘束を受けている全ての少年に対し、適正手続の履践の要請の観点から、認められるべきであり、罪名や法定刑の如何で区別されるべきではない。

 

2 検察官の関与対象事件は、現行法以上に広げられるべきではない。
 もともと、検察官は、少年の健全育成を担うという専門性を有しない。それにもかかわらず、2000年の少年法改正では、家庭裁判所の非行事実認定に協力するものとして、一定の重大事件への検察官関与を導入した。
 しかし、少年審判は刑事裁判と異なり、予断排除の原則も、伝聞証拠法則の適用もなく、証拠制限の手続はない。捜査段階の証拠は全て家裁送致時に裁判所に送られ、裁判官は、審判が始まる前に全ての証拠に接している。子どもたちが、長期間にわたり、逮捕、勾留された状態で、自白の強要を受けて作成された供述証拠、違法な捜査によって収集された証拠、捜査機関が恣意的に作成した捜査報告書なども、刑事裁判の場合と異なり、証拠から事前に排除することはできない。 そのために、裁判官も、少年自身の弁解を聴取しないままに証拠に目を通し、一定の心証を形成したうえで、審判を開くことを余儀なくされ、少年が事実関係を争うとすれば、成人の刑事裁判の場合に比べて、はるかに不利な状況に置かれることになり、少年法の理念を無視した審判運営がなされれば、冤罪が起きる危険性は極めて高いものになる。だからこそ、弁護士付添人がついて子どもの言い分を代弁することが必要なのである。
 これに対して、捜査の担い手である検察官が、捜査段階を引き継いで有罪立証を遂行することは、少年が違法・不当な捜査に対して真実を主張しようとすることに対して、心理的な圧迫を加えることにほかならない。
 いわゆる大阪地方裁判所所長襲撃寃罪事件では、非行事実なしとした家裁の不処分決定に対し、審判に関与した検察官が不服として抗告受理の申立をしたため、最高裁での審理を経て冤罪が晴れるまで、実に4年半の歳月を要した。検察官の審判関与、抗告受理申立のあり方が、未成熟な子どもの特性への理解を欠き、無罪推定の原則を逸脱し、自白を偏重した不適切なものであった典型例である。
 2000年の少年法改正による検察官関与が、実際に少年審判においてどのような役割を果たし、少年の健全な育成にどのように寄与したのか正確な検証がなされるべきであり、それがなされるまでは、関与の範囲を拡大すべきではない。
 現に、最高裁判所も、国会における答弁で、日弁連の少年保護事件付添援助事業により、観護措置をとられた少年の70%以上に弁護士付添人が選任されている現在の状況下において、事件関係者から、審理のバランスを欠いているといった批判がないことを認めている。このことは、国選付添人制度拡大とのバランス上、検察官関与対象事件をも拡大しなければならないという立法の根拠となる事実は存在しないことを示している。
 弁護士付添人がつく以上はバランスを保つために検察官も関与すべきという議論は、このような少年審判と刑事裁判の違いを無視し、付添人を、あたかも当事者対等の刑事訴訟の弁護人と同視し、少年が裁判官の面前で捜査機関、訴追官である検察官から追及されることを当然とする暴論であり、捜査段階での自白を撤回することに対する圧力を認める以外の何物でもない。
 今回の「改正」法案は、検察官関与対象事件を、飛躍的に拡大しようとするものであって、少年法の理念の後退をさらに進行させ、ひいては崩壊をもたらす危険をはらむものというべきである。


3 少年事件の不定期刑、代替有期刑の上限引き上げが必要であるとする立法事実は明らかでない
 今回の少年に対する刑罰の強化は、これまでになされた成人の懲役刑上限引き上げに連動するものと思える。しかし、おとなの10年と子どもの10年は、全く意味が異なる。16歳の子どもが、20年服役することとなれば、社会で暮らした時間より、刑務所で幕らした時間の方が長くなってしまう。心身の成長が最も著しい時期に長期間社会から隔絶された子どもが、社会に戻ってきたときの社会適応の困難は容易に想像できる。社会に居場所を失い、ひとりの社会人として、自立することが不可能となれば、再び犯罪者となるしかなくなる恐れが大きい。
 またこのような厳罰化には、少年犯罪を抑止する効果も期待することができない。
 少年犯罪被害者の権利回復は、厳罰化によってではなく、被害者の国選弁護人制度の実現などを含めた総合的な制度構築により行われるべきである。


4 なお、今回の「改正」法案については、「国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲拡大」として、国選付添人拡大と検察官関与拡大が一体のものであるかのように説明されている。
 しかし、両者に理論的な関連はなく、上記のような問題のある検察官関与拡大を、国選付添人拡大に乗じて実現しようとすることは極めて不当である。有期刑の重罰化についても、同様である。
 私たちは、これまで一貫して検察官関与と厳罰化に反対を表明してきた。日弁連も同様だった。弁護士の使命は、人権擁護と社会正義を実現することにあり、そのために、あらゆる権力とも一線を画し、自由独立を貫く必要がある。
 私たちは、子どもの権利保障のために、全面的国選付添人制度の実現を求めるものであるが、少年法の理念を根底から覆す、検察官関与対象事件拡大、有期刑上限引き上げには、強く反対する。

                                     以上

 

 

2013年11月6日 院内集会のお知らせ

ちょっと待って!少年法「改正」

2013年2月8日、法制審議会は、検察官関与拡大と少年法の有期刑引き上げを内容とする少年法改正案を採択し、法務大臣に答申しました。

その後、第183回国会、第184回国会ではこの法案が提出されることはなく、10月15日に始まった第185回国会においても、現時点で少年法改正法案は提出されていません。

しかしながら、既に法律案が作成されている以上、いつ提出されてもおかしくない状況であることに変わりはありません。

そこで、私たちは国会議員の方々にも問題意識を共有していただくために、院内集会を企画いたしました。

皆さま奮ってご参加ください。

日時:11月6日(水曜日)午前11時半~午後1時(11時15分開場)  

会場:参議院議員会館B109号

内容:少年の心に寄り添う審判とは?

   ~少年法の歴史を振り返りながら、あるべき審判の姿を探る~

   討論者:多田 元   弁護士(愛知県弁護士会

                        村井  敏那 大阪学院大学教授・弁護士(東京弁護士会

       坪井  節子 弁護士(東京弁護士会

 

 

 

2013年7月20日 少年法「改正」を考える連続学習会のご案内

子どもとどうかかわるか?

 Part3「非行と向き合うための対話」

お 話:いじめと修復的対話

     山下英三郎さん

      (元スクールソーシャルワーカー/日本社会事業大学名誉教授)

コメント:少年法『改正』問題にひきつけて考える

     佐々木光明さん

      (神戸学院大学教授)

 日時:2013年720()  午後6時00分~8時00分

 会場:文京シビックセンター 3階 会議室1・2

    東京メトロ後楽園駅より徒歩1

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 ★過ちを犯した子どもに向けられる社会の目は厳しく、少年法の新たな「改正」が持ち上がっています。
 しかし、「非行」として問題が現れる以前に、虐待など非常に厳しい状況を生き、苦しみを抱えてきた子どもたちの現実を、付添人活動等をとおして実感しています。
 「子どもたちが追い詰められずに生きられるために」、多くの人と一緒に考えたいと、連続学習会を企画しました。

   なお、学習会の内容を採録いたしました。詳細は「子どもと法・通信(2013年10月号)」に掲載されています。下記サイト(PDF版)を御覧ください。

   http://www.kodomo-hou21.net/pdf/20130720.pdf

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★第1回目(2月開催)は、佐賀バスジャック事件被害者の山口由美子さんのお話をお聴きしました。
 自らが流した血で染まった周りを見ながら「少年は私の傷と同じくらい心が傷ついている」と感じたと山口さんは言います。
 事件当日の加害少年の状況やバス内部での様々な優しいやりとり、事件後の多くの人による支えや加害少年の心からの謝罪。
 それらと共に、時間をかけて事件に向き合い、加害者の被害性を埋めていく大事さを感じているとお話されました。

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★第2回目(4月開催)は、元家庭裁判所調査官の寺尾絢彦さんから、「子どもたちの声なき声を聴く」というテーマでお話をお聞きしました。
 「少年審判では、子どもたちが本当のことを語り、自分自身がこれからどんなことを目標にしていけばいいかに気づくことが重要。」
 そして、そのために、時間をかけて子どもたちの言葉を引き出し、その言葉のさらに奥にあるものを見つけていくことの大切さを共有しました。

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★第3回目は、山下英三郎さんをお招きします。
 山下さんは、スクールソーシャルワークに取り組み、その実践は、学校現場にも大きな影響を与えてきました。
 現在は、修復的対話を通して、加害者と被害者の間で起きたことについて、平和的に解決する方法を紹介しています。

 子どもたちを苦しめる重大な人権侵害、「いじめ」。その解決策として、警察権力の介入を求める声が聞かれます。
 パート3では、子どもたちへの制裁ではなく、対話によって、子どもたちの抱えている課題を解決する道を皆さんと考えたいと思います。
 ぜひご参加ください。 (参加費無料 申込不要)

 

2013年4月18日 少年法「改正」を考える連続学習会のご案内

子どもとどうかかわるか?

Part2「子どもたちの声なき声を聴く」 

 

お話:寺尾絢彦さん

    (元家庭裁判所調査官/ミーティングスペース・てらお主宰)

参加者によるディスカッション:「少年法を生み出した理念って?」

 

日時:2013年4月18日(木)  午後6時30分~8時30分

会場:文京シビックセンター4階 シルバーホール(※東京メトロ後楽園駅より徒歩1分) 

 (詳細チラシ f:id:yuushinokai:20130126222751g:plain)

 

学習会の内容を採録いたしました。詳細は下記サイトを御覧ください。

http://www.kodomo-hou21.net/_action/20130418.html

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過ちを犯した子どもに向けられる社会の目は厳しく、少年法の新たな「改正」が持ち上がっています。 

しかし、「非行」として問題が現れる以前に、虐待など非常に厳しい状況を生き、苦しみを抱えてきた子どもたちの現実を、付添人活動等をとおして実感しています。 

子どもたちが追い詰められずに生きられるために、多くの人と一緒に考えたいと、連続学習会を企画しました。 

Part2となる今回は、元家庭裁判所調査官の寺尾絢彦さんをお招きし、家庭裁判所の調査・審判の過程をとおして、おとなたちがどう関わることが、子どもたちが被害や加害、事件や自らに向き合うことにつながるのか、お話をうかがいます。 

後半の参加者全員によるディスカッションでは、どうして少年法がおとなの刑事裁判とは別に生み出されてきたのか? 戦後憲法のもとで生まれてきたときの理念はなんだったのだろう? と探ってみたいと思います。
時間を戻すことができない、加害と被害があったという事実を前に、「償う」とはどういうことなのか。当事者ではない人に何ができるのか。一緒に考えてみたいと思います。ぜひご参加ください。 (参加費無料)